シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 フルトヴェングラー / ベルリン・フィル (1951)

  1. 2012/02/01(水) 13:21:54|
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1951年のセッション録音。 モノラルながらいたって明解。フルトヴェングラーのやっていることがよく伝わってくる。



自在なテンポの変化やここぞというときの追い込みの激しさはいかにもフルトヴェングラーという感じ。とはいえ、ほどほどに抑制が効いている。やんちゃな感じはしない。全体としては、堅固で締まった『ザ・グレート』という印象が強い。

フルトヴェングラーというと怒涛のような音響を連想するけれど、そこまでの凄味はない。録音のせいなのか、そういう演奏なのか? たぶん、そういう演奏なのだ。
弦のサウンドは引き締め気味。一方、木管群は手応えのある鳴り方で、しっかりと歌っている。楽曲を自分の色に染め尽くしてしまう指揮者というイメージがあるけれど、この演奏では作品の書法に対応している、ように聴こえる。そのぶん、サウンド全体は締まって聴こえるのだろう。
よりスケールの大きな演奏はあるけれど、個人的には、壮大にやりすぎると空疎に聴こえがちな楽曲なので、このくらいで十分。

基調は硬派。第二楽章あたり、この指揮者らしいテンポの変化は印象的だったりするけれど、情緒感はほどほど。うっとりと聴き惚れるほどではない。

1942年のライブ録音に比べてインパクトはかなり落ちるような気がするけれど、スケールが大きくて堅固な『ザ・グレート』像としては、良く出来ていると思う。造形美と劇性がこの指揮者なりのバランスで見事に両立されていると感じる。

シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 エーリッヒ・クライバー / ケルン放送交響楽団

  1. 2012/01/18(水) 13:25:15|
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1953年のセッション録音。明解で、ほど良く柔らかさがあって、良質なモノラル録音。



のけぞるような強靭さと、しなやかかつ細やかな表情との間をダイナミックに行き来する。表現の振れ幅はマックス値。
そして、潔癖なまでにタイトに締まったアンサンブルゆえに、厳しさと緊張感が漲っている。

透明感を感じさせる響きではないけれど、引き締まっているために見通しはすこぶる良好。すべてのパートが均等に近いバランスで鳴らされていて、木管群をはじめとした内声部も雄弁。
ぎんぎんに引き締められたアンサンブルだけど、単に合奏の精度を追求するのではなく、音楽のニュアンスの遷移を一点の濁りもあいまいさもなく聴かせようとしている。作品のとらえ方はロマンティックだけど、演奏に臨む姿勢には容赦が無い。

理論上表現の振幅が大きくなりそうなアプローチだし、滅多にないくらいに彫りが深くて克明な演奏だけど、必ずしも表情豊かに聴こえないのは、演奏姿勢の厳しさ、漲る緊張感のせいだろう。癇症のような音楽になっていて、聴き疲れしてしまう。
音楽の表情を決めのは、表現の内容だけでなく、演奏を支配する空気みたいなものも関与しているようだ。



オーソドックスっぽいアプローチをしながら、他の誰とも違う個性を聴かせるし、作品の洞察とオーケストラの掌握に関しては別次元にいるような感じ。類まれな才能だと思う。
だけど、愛されやすい持ち味ではなさそう。こういうのを孤高と呼ぶのだろうか・・・

シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 ヴァント / ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2011/12/30(金) 11:34:09|
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1993年のライブ録音。



後期ロマン派の大交響曲にこそふさわしいような大きな構えで、大規模で悠然とした作品像を提示している。なにしろ演奏様式の洗練度はすこぶる高い。また、表現としても技術的にも磨かれている。

緻密にアンサンブルを鳴らし分けているので内声部の動きまで明瞭。とはいえ、バランスとしては外声部優位に聴こえる。主に弦群が音楽の流れを主導し、スケール豊かで量感のある音響をもたらしている。そこにミュンヘン・フィルの艶のある美音が相まって、たっぷりとして陰影豊かな音楽になっている。



反面、わき立つような躍動感はない。たっぷりの余裕が緩衝材のようになって、活気を吸収しているような。そのために、いくらか茫洋として聴こえる。

演奏様式を磨き上げようという意識が強いあまり、スリルとか生々しさは感じにくい。サウンドとしては表情豊かに聴こえるけれど、フレージングとかリズムとかが静的に整えられているので、音楽の息吹みたいなものはもうひとつ。

確かに洗練度と完成度は際立っているけれど、指揮者の統制が透けて聴こえるために、人工的な印象を受ける。

シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 カラヤン / ベルリン・フィル (1978)

  1. 2011/12/23(金) 12:43:45|
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1978年のセッション録音。艶があって色彩感豊かなサウンド。切れのある音質ではないけれど、情報量は十分にあると思う。奥行きはあまり感じられない。



華麗で颯爽としている。悪く言えば芯のない、良く言えば柔軟でスムーズなフレージングに、華やかで優美なサウンド。それだけだと腰の軽い音楽になりそうだけど、テキパキとした進行と切れの良さが引き締めている。

素朴さのかけらもないタッチがこの交響曲に合っているとは感じないけれど、何よりも音楽の自然な流れや勢いが重んじられているので、違和感を覚えることはない、個人的に。

また、響きの量感を控えめにして、細部の効果的な工夫を聴かせる。この指揮者の上手さをあらためて感じさせられた。



特筆したいのが第三楽章中間部のトリオ。歯切れがよくて、それでいてニュアンスたっぷり。しばし聴き惚れてしまった。

一方、第二楽章はさくさくとした進行。とことん優美に、流麗に演奏されているけれど、あまり後をひかない。

第一、第四楽章は、華やかなサウンドより、歯切れよく小気味よさが気持ちいい。もったいぶらないで、ノリよく駆け抜ける。



カラヤン固有のテイストははっきりしているけれど、そのうえで作品の勢いとか流れを活かそうとする姿勢が感じられる。

シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 シューリヒト / シュトゥットガルト放送交響楽団

  1. 2011/12/03(土) 21:00:00|
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1960年のセッション録音。ステレオ録音。 サウンドの鮮度が低い上に加工臭がする。残念な音質が少々足を引っ張っているような感じ。とはいえ、演奏の魅力を損なうほどではない。



聴こえてくる音楽は自然体で鷹揚。何か特別なことをやっているようには聴こえない。おかげで、一聴しただけでは無造作で小ぶりな演奏に聴こえるかもしれない。

すみずみまで磨き上げたような精密な美しさとは対極だけど、細かいところまで活気が吹き込まれていて、音楽は刻々と色合いを変えていく。たぶんシューリヒトの頭の中では、音符1つ1つの意味から行間までがすっかり解析され、消化され尽くしているに違いない。

融通無碍に演奏しているようだけど、あくまでも楽譜に命を吹き込むために創造性を奮っている、ように聴こえる。聴いていて、作品そのものに触れているような親密さを感じる。
指揮者独自の美意識への執心が感じられず、エンターティナーとしては素朴というほかない。しかし、だからこその信頼感がある。

スケールの大きな演奏にありがちな、弦が大きな枠組みと流れを形作って木管が彩りを加える、みたいなバランスとは一線を画する。木管が弦や金管と対等かそれ以上に露出し、濃やかな表情を振りまき、音楽の流れを積極的に作り上げていく。アンサンブルの親密度は格段に高い。
軽快できびきびとした進行は気持ちよく、すべてのパートが活き活きと前に出てくるから、それだけ活気と色彩感が高まる。

一見何てことのない演奏のようでありながら、聴き方によっては滅法おもしろく、奥が深い。他と聴き比べるほどにその思いは強くなる。

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