ベートーヴェン 交響曲第7番 カラヤン / ベルリン・フィル (1962)

  1. 2011/12/28(水) 06:00:00|
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1962年のセッション録音。古いステレオ録音ながら音質は良好。録音会場の音響を彷彿とさせつつ、細かい音が必要十分にとらえられている。



明快な語り口&きびきびとした運びと、厚みと量感のある音響を両立させた演奏。それに尽きるかもだが、並び立たせ難い要素をバランスさせる洗練したやり方と、その格好良さに耳を奪われてしまう。
この録音時点の感覚で、本場の伝統的な作品像をフレッシュに聴かせることに成功していると思うし、今聴いてもけっこう新鮮。

芯のない柔らかいフレージングだけど、切れのあるリズムのおかげでアンサンブルの線が泳ぐ感じはない。巧みにコントロールされて、分厚い響きの中に軽快な身のこなしを感じさせる。
響きは磨かれているけれど、甘さとか艶が目立つほどではなく、厚い響きが野暮ったくも息苦しくもならないように、ほどよく中和している。

ベルリン・フィルの機動力はすごくて、第四楽章あたりは圧倒的。ホールに広がる響きの量感も凄みを加速させている。機械的な感触はない。



カラヤンの関心は、もっぱら自己の演奏様式の洗練に向かっている。しかも、わかりやすいタイプの様式美を追求している。統制が強くなるぶん、表現の幅に一定の枠が加えられてしまう。聴覚の次元ではダイナミックなのだけど、聴き手の情緒を大きく揺り動かすようなアプローチではない、と思う。
ただし、情緒的に演奏することがこの交響曲に相応しいのだろうか?まあ、程度と好みの問題だろう。

ベートーヴェン 交響曲第7番 フルトヴェングラー / ベルリン・フィル

  1. 2011/09/04(日) 16:00:00|
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1943年のライブ録音。音は貧弱だが、演奏の凄みを味わえる水準にはある。
さすがに第4楽章のコーダは録音の弱さを意識させられたが、全体としてはすんなりと楽しむことができた。



手がつけられないくらいにフルトヴェングラーの才能が爆発している。極限と感じられまでにドラマティック。

演奏の現場が燃え上がっているだけではない。演奏の設計自体が、壮大で情熱的なドラマを強く指向している。激しい部分は狂気を感じさせるくらい追い込むが、穏やかな部分では息の長い歌い口で聴き手を引き込む。全体としては彫りが深く起伏大きなドラマに仕立てられている。忘我と理知が交錯するようで、芸の懐が深い。

演出意図が見え見えの大げさな表現だけど、フレージングとかテンポの変化が絶妙で、不自然に聴こえない。この語り口には毎度うならされる。また、曲調の変化に則った強調なので、やっていることのエグさのわりに、違和感は強くない、と思う。

物量と馬力はすごいけれど、それ頼みではなく、音楽の呼吸を自在に操りながら、これ以上は考えられないくらいの、起伏に富んだメリハリの強い表情を生み出している。
壮大な第一楽章に、深く長い息で歌われる第二楽章。分厚く強大なサウンドが怒涛となって疾駆する第四楽章。徹底されていて、とにかくおもしろい。

とはいえ、「曲調を踏まえた上での強調」の程度が恣意的な誇張の域に達しているのは否定できない。刺激と興奮が優先され、アンサンブルの妙味みたいなものを楽しむことは難しい。
特に、第三、四楽章のようにグイグイと力強くスピーディーに展開する楽曲になると、内声部が埋もれて表情が単純になりがち。

こういうアプローチを肯定するか否定するかは別にして、フルトヴェングラーが常軌を逸した存在であることは実感できるはず。普通なら思いついてもなかなか実践できないことを、120%やりきっているような、そんな感じ。音楽観としては狭いのかもしれないけれど、極め尽している。

ベートーヴェン 交響曲第7番 クレンペラー / フィルハーモニア管弦楽団 (1955)

  1. 2011/09/01(木) 08:00:00|
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1955年のスタジオ録音。この音源にはステレオ録音、モノラル録音の両方があって、ここで採り上げるのはステレオ録音の方。

音が生々しいのはモノラル録音の方だと思う。ステレオ録音の方は残響が多くて、生々しさは後退している。
とはいえ、クレンペラーならではの開放的で立体的なサウンドは、ステレオ録音でなければ体感できない。いかにも古臭い感じの音だけど、演奏空間の自然な広がりを感じ取れる。

ちなみに、同じ顔ぶれで1960年と1968年にスタジオ録音されている(後者では、オケの名称が変わっているけれど)。



天に向かって屹立するように大きく、ガッチリとした造形。各パートは鳴らし分けられ、開放的に響き、立体的に定位している。
この演奏に熱狂はないけれど、一拍一拍を踏みしめるように力強く、かつ推進力がある。ここ一番での力の開放は、瞬発力があって、よく伸びて広がる。

あらゆるディテールがくっきりと伸びやかに鳴りながら、ピタリと連係して全体を構築していく。演奏技術とかサウンド以前に、音楽のあり方として見通しがよくて明快。
個々の要素がバランスし、そして部分と全体も調和している。演奏のストーリーゆえにディテールが歪むことはないし、ディテールにこだわるあまり流れが滞ることもない。
クレンペラーの統率力、オーケストラの機動性とも冴え渡っていて、完成度は高い。

終楽章は力にあふれているけれど、第一楽章とのバランスを重視して、堂々とした歩調で雄渾な表情を作り上げている。その結果、全4楽章の均衡美を実感させられる。古代の石造りの神殿のような揺るぎない均衡美。

好悪はともかくとして、この交響曲の1つの作品像を高い完成度で提示していると感じる。



情緒面ではもっぱら作品に語らせようとしている。作品から読み取れる”ニュアンス”みたいな物はもれなく拾い上げるけれど、それにストーリー性を加えることを一切していない。音楽の展開を主導するのは、あくまでも構造とか構成。
第二楽章が典型的。表現の彫りが深くて、かつ気分を確実に切り替えていく。そうとうに雄弁だけど、特定の気分に酔わせてくれる演奏ではない。

ベートーヴェン 交響曲第7番 テンシュテット / ロンドン・フィル

  1. 2011/08/17(水) 20:22:03|
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1989年のライブ録音。BBC LEGENDS盤。ディテールの鮮度はそこそこだけど、雰囲気がよく伝わってくる音質。



熱演寄りのバランス指向、というあたりだろうか。時代考証的なことを無視できれば、この作品の標準として通用しそうなくらいに、行き届いた演奏だと思う。

テンポはほど良く、フォルムは整っている。味付けとか誇張は見当たらない。
技術的にも表現の面でも全曲通して安定している。終楽章では、必要充分な興奮をもたらしてくれるけど、崩れた感じ、力づくな感じはまったくしない。

弦主体だけど、各パートはバランス良く聴こえてくる。とはいえ、分離の良い端整なアンサンブルを狙っているようではなさそう。個々のパートをウェットかつ甘口に鳴らさせて、各声部の音を積極的にブレンドさせている感じ。
その結果、響きの全体としては重層的で仄暗い。録音とかホールの音響特性の影響もあるだろうけれど。



「この演奏でなければ!」と言いたくなるような強い引きは弱いかもしれない。オーケストラの持ち味は渋いし。
しかし、1950〜60年代頃の本場物の演奏にあった芯の強さを残しつつも、今風に耳当たり良く仕上げられたベートーヴェンという意味で、よくできた演奏様式だと思う。

ベートーヴェン 交響曲第7番 ワインガルトナー / ウィーン・フィル

  1. 2010/11/07(日) 15:06:02|
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1936年の録音。予想したよりずっといい音で、十分に演奏を楽しめる。それなりの情報量を持った録音のようだ。
ワインガルトナーの実演の音を聴いたことはないが、艶のある美音を想像させられる。それを実感できるほどの音質ではないけれど、そういう気配は伝わってくる。



全般的に、音響は艶やかで肉付きがよく、表現は品よく洗練されていて、場面ごとの表情の変化を明解に聞かせてくれる。
テンポは小刻みに変化するけれど、音楽の抑揚の変化に沿っているので、不自然な印象はない。というより、そうすることによって音楽を積極的に息づかせている。

壮大指向ではないけれど、それなりに恰幅はよく、作品の柄の大きさは実感される。

音楽をスムーズに流しながら、一点一画を疎かにせず、むしろ表現の密度は濃い。
顕著なのは中間の2つの楽章。第2楽章の主題やを第3楽章トリオの部分ではオケをじっくりと歌わせる。しつこくはないけれど濃口。
終楽章は、煽り高ぶるようなそぶりはないけれど、表現の密度を保ったまま爽快に、たくましく盛り上がっていく。貧弱な録音込みで圧倒的とは言いがたいものの、欲求不満は残らなかった。

目立つような何かをやっているわけではないけれど、音楽のすみずみまでワインガルトナーのテイストが浸透していて、聴後の手応えは大きかった。

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