グレツキ 交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」 ジンマン / ロンドン・シンフォニエッタ他

  1. 2012/08/05(日) 06:00:00|
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1991年のセッション録音。



この作品の知名度がどの程度なのか分からないので、念のために作品自体の印象をざっくりと書いてみる。

20世紀ポーランドの作曲家グレツキ(1933.12.6 − 2010.11.12)の代表作の一つ。初演は1977年。
まさにこの録音の大ヒットにより、グレツキの名前が世界的なものとなったらしい。

3楽章構成で演奏時間は50分を少しばかり超える。3つの楽章ともLento(緩やかに、ゆっくり)の指定。
情緒感たっぷりの簡潔で親しみやすい主題のいくつかが、これといって発展させられることもなく連綿と進行する。特に、全体の半分を占める第一楽章は、聴いていて時間の感覚を失いそうになる。
現代音楽家が研究と実験を繰り返した挙句に、グルッと一周して中世の聖歌にもどったわけではないのだろうけれど、手練手管を打ち捨てて、心から表現したいことだけを形にしたらこうなりました、みたいな印象。

各楽章ともソプラノの独唱が嘆き悲しむ歌詞を歌う。第2楽章の歌詞がゲシュタポ収容所の壁に書かれた言葉に拠っているなど、シリアスな情感を満面に湛えている。これを簡潔ながら深く美しいオーケストラ・サウンドが包み込む。陰鬱なテーマを扱いながらも、聴き手を現世から引きはがそうとでもするように、そのサウンドはしばしば夢幻的な響きを帯びる。
ちょっと中毒性があるかも。聴かせる戦略としてはずいぶんシンプルで、こんなので50分以上をもたせられるのかと不安を覚えるけれど、何なく聴き通せてしまう。



上に書いたとおり、この録音は英国で(クラシック音楽としては)大ベストセラーになったらしい。
どちらかというと、作品の悲嘆的な側面より、音響効果の心地よさに軸足を置いた感じの演奏。アップショウの艶やかな美声とか、ムードたっぷりのオーケストラ・サウンドによる快感の方が、シリアスな手応えを上回って聴こえる。
が、あくまでも程度の問題であって、作品像を歪めて伝えるようなことはないだろう。甘口に味付けされている、というくらいのこと。洗練されていて、うまくて、作品を親しみやすく聴かせてくれる。


(作曲者と指揮者)