スメタナ 連作交響詩『わが祖国』 ノイマン / チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 (1975)

  1. 2012/12/15(土) 06:00:00|
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1975年のセッション録音。高音のメリハリが若干強調されているような感じだけれど、優秀な録音だと思う。サウンドイメージが自然で、情報量豊富。



とりあえず、ノイマンの演奏様式の洗練とチェコ・フィルの磨かれたアンサンブルに感心させられる。

楽曲の構成・書法を浮き彫りにするように、引き締まっていて切れ味が良い。低音をスッキリと響かせて、各パートの質感をくっきりと聴かせる。

造形としては緩みを感じさせないけれど、それでいて、アンサンブルはしなやかだし、サウンドはほんのりと艶とか潤いを帯びていている。瑞々しさを絶やすことがない。

スケール感は標準体型という感じで、緩急のコントラストを際立たせるような大きな身振りはないけれど、引き締まった緊張感を背景に、音の強弱をメリハリよくダイナミックに聴かせる。
特に盛り上がる部分でのたずな捌きは頼もしい。パンチを効かせながら、にじみや濁りを微塵も感じさせない。

チェコ・フィルの演奏は、きらびやかではないけれど、ものすごくうまいしキャラが立っている。



『わが祖国』の形式的な面でのポテンシャルを顕にするようなアプローチだし、洗練された手並みと思う。
ローカルな美質を残しつつも、愛国心めいたキャッチ抜きで、母国の大作曲家の代表作の普遍的な価値を示そう、とノイマンが意図したかは分からないけれど、もしそうだとしても何ら違和感を感じさせないような演奏、と思う。



一方、交響詩としての標題性は弱い。様式的な方向での引き締めが強い分、喜怒哀楽といった情緒を刺激するとか、こちらの想像力をかきたてることはない(たぶん)。交響詩のイマジネーションの世界に遊ぶには不向き、と思う。

終曲の「ブラニーク」なんか、ダイナミックな息遣いでメリハリ良く展開されるけれど、英雄譚としての高揚とか火照りとは無縁な感触。

交響詩に何を期待するかは聴き手次第だけど、この演奏の弱点となりうる側面だと思う。


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スメタナ 連作交響詩『わが祖国』 ベルグルンド / ドレスデン・シュターツカペレ

  1. 2012/12/04(火) 14:10:46|
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1978年のセッション録音。音の場の広がる感じはもう一息という印象だけど、明解なディテールを豊かな響きが包み込む、という感触が気持ちの良い音質。



軽くて切れのあるリズム。鋭敏で抑揚がある。ただし、鋭さとか角張った感触はなく、軽快に、スムーズに展開させていく。
そして、それらをほどほどに緩くて量感のある低音パートが柔らかく包み込む。そのせいか、演奏の骨格はかなり引き締まっているけれど、それなりに恰幅の良い響き。

フレーズは、歌うというより、リズムにのって舞うような、しなやかにしなるような感じ。
「モルダウ」の歌い回しは、水面に波紋が次々と広がっていくような感触。メロディにどっぷり浸ろうとすると肩透かしだけど、別種の心地よさがある。

サウンドは、オーケストラや録音会場の特性を反映してか渋めの色合いだけど、テクスチュアはきわめて鮮明。落ち着いた色調ながら、カラフルといってもいいくらいに色数が多くて、それらがリズムにのって小気味よく回転していく。



『わが祖国』の交響詩としての世界観に入り込むより、鋭敏かつしなやかなやり方で楽譜を表現しつくそうとしているようだ。
ドラマとしてのダイナミズムよりも、上に書いた演奏様式の徹底を重視している感じ。姿勢としてはいたってクール、と思う。

そして、ベルグルンドのオーケストラ・ドライブは壮快だし、ドレスデン・シュターツカペレは、柔軟な機動力でもって応えている。全体に渋めの艶ののった響きが魅力的だし、繊細な場面での磨かれた美しさ、激しい場面での歯切れの良さは特筆ものと思う。

演奏によっては野暮ったく響くことのあるスメタナのオーケストレーションが、ずいぶんと見通しよく色鮮やかに聴こえる。
ローカル色と距離を置いて、スメタナの力量を堪能する思い。



この演奏に限らず、様式美重視のアプローチによる『わが祖国』を通して聴く場合、後ろの2つの交響詩「ターボル」「ブラニーク」が鬼門になると思う。

この2つは特に叙事詩的な性格が強く、演奏者が語り部となって名調子を聴かせてくれる方が具合が良い、と思う。
スメタナの表現力は相当なものと思うけれど、かと言ってワーグナーの楽劇のような、音楽がドラマをすっかり内包しているような域に達しているとは感じられない。
楽譜をきっちりと音に変換するタイプの演奏では、今ひとつ盛り上がれない、個人的に。

ベルグルンドのこの演奏も例外ではないと感じる。
小気味の良い展開と豊かな色彩感で、構成とか書法のおもしろさを味あわせてくれる。これはこれで魅力的と思うけれど、作曲者の意図した英雄譚としての楽しさとは違うような気がする。
そして、そのぶんだけ、先の4つの交響詩と比べて聴き劣りを覚えてしまう。

とはいえ、演奏者の表現力の問題というより、楽曲の特性(あるいは限界?)によることと考えたい。
個人的には、ベルグルンドのシベリウスの演奏を聴いたときよりもずっと強く、この指揮者に興味を感じた。


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