チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 ハフ / ヴァンスカ ミネソタ管弦楽団

  1. 2013/06/12(水) 13:42:09|
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2009年のライブ録音。盛大な拍手入り。
hyperion(ハイペリオン)レーベルの「ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ」の1つ。



端整に、鋭敏に、敏捷に、一点の曇りなく楽曲の成り立ちを明らかにするようなアプローチ。ごく真っ当な姿勢のようだけど、段違いの精巧な作りと超絶技巧が、この演奏を非凡なものとしている。
わかる人にはわかるというレベルではなくて、明晰であることが快感としてビンビン響いてくる。

指が回る回る、高速かつ精密に。音の粒子が、無重力の空間で秩序正しく高速運動を繰り広げる感じ。

端整な質の音楽ではあるけれど、整えるための抑制は感じられない。盛り上がる場面ではオーケストラと互角以上に響き渡る。
第3楽章の終盤あたりは、燦然とした強靭な打鍵で会場を圧倒する。



音の一つ一つが精密かつ整然とコントロールされているけれど、機械的に整えられている感じではなくて、端整な中に、横の流れの変化とか、音の重ね方のアイディアなどが仕込まれていて、曲調の変化を鋭敏に、余すところなく捉えている、と思う。

明晰なタッチ、重力から解き放たれたようなリズムなどなどにより、濃厚な情緒みたいなものは望めない。濃いとか薄いとかではなくて、気分とか雰囲気で聴衆をいい気持ちにしてやろう、という発想を感じない。
好き嫌いの分かれるポイントになるかもしれない。

もともと濃い作風の音楽の濃さを強調するように演奏されてしまうと、それ以外の要素が見えにくくなってしまう。
わたしはハフの演奏を聴いて、すっかり聴き古したつもりでいたこのピアノ強奏曲に、まだまだ楽しめる可能性があることを教えられた。
このピアノ協奏曲の凝りに凝られたところが、息苦しさを伴わないで、すんなりと流れ込んでくる。



ヴァンスカ指揮ミネソタ管弦楽団は、陰影や湿り気を感じさせないテイストに好みが分かれるかもだけど、好サポートだと思う。

明るい伸びやかな響きでピアノを包みこみながら、ピアノしっかりと際立たせてくれるし、オーケストラが目立つ場面では、ハフの音楽作りに見合うきめ細やかな表現。

これを聴いて、ヴァンスカらによるチャイコフスキー演奏に期待が高まる、ということはなかったけれど、ピアノの芸が細かいだけに、抑揚を弁えた伴奏はありがたい。