万年筆の持ち方 - キャップを付けて書く?

  1. 2009/08/12(水) 19:15:45|
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以前にここで書いたような気がするけれど、原則として筆記時にはキャップを付けない。例外はミニサイズのペンで、本体だけの長さが12cmより短くなると書きづらくなるから、キャップを付ける。

純粋な趣味として、あるいはその延長上で万年筆を使うなら、好きにすればよいと思う。
万年筆初心者の頃のわたしは原則キャップを付けて書いていたが、主たる理由は、キャップを軸のお尻に付けた姿の方が(ペンの)見栄えがする、というものだった。そのほうが、所有する喜び、使う喜びが高まる。これだって立派な理由になると思う。

最近は、万年筆を突き放して見られるようになったのか、実用性をより重んじるようになった。もっとも、一言で実用性といっても、使う人やその目的によって一様ではない。
キャップの紛失防止、ペンの落下防止やそのダメージ軽減の目的から、キャップを付けることを推奨する考え方がある。これは高度に実用的な助言と思う。
ただし、わたしはたまたまキャップを紛失したことが無く、またペンを落とした経験は1度だけなので、この観点には乗らない。

わたしが重視するのは、日本語を、実務的な字の大きさで、長時間にわたって書き続けるときの、快適性。

筆記体での欧文の筆記ではペン先の動きは概ね回転運動になるが、漢字を書く際のペン先の動きは不規則。そして画数はしばしば多くなる。たとえば、"My name is Taro Yamada."を筆記体で書くより「私は山田太郎です。」と書く方が、ペン先の運動量は多い。それだけペン先の機動性への要求水準は高くなるはず。
キャップを付けると、ペン全体の重心が後方に移動するので、持ち位置も後退し、ペンを寝かせて書く体勢になりがちだが、程度を超えるとペン先の機動性が損なわれる。一見力が抜けて楽なようだが、手が特に大きくない限り、縦線を描くときに運動量が増えるし(軸を立てて書くときは指の運動で完結する操作に、寝かせて書くことで手首や肘まで動員することになる)、ペン先を細かく動かすには向いていない。

実務的に適度な文字の大きさ、たとえば5〜7mm罫の大学ノートにスムーズに筆記するという点でも、程度を超えて軸の後方を持ってしまうと、上に書いたようなペン先を細かく動かしにくいことの弊害が生じる。
キャップを付け、ペン軸の後方を持ち、軸を寝かせて書く、というアドバイスは、書き味の引き出し方としては成り立つけれど、実用性の面では万年筆の用途を著しく狭めることになり、この筆記具の普及の妨げになるように思う。

長時間にわたって書くと言っても、30分なのか、60分なのか、数時間なのかで捉え方は異なる。
いずれにせよ、保持する重量が増せば筋肉への負荷は高くなる。キャップを付けることは、負荷を高めることになる。
たとえばペリカンのM800のキャップは約8g。たかが8gと言っても、これは1コインで買える筆記具1本分に相当する重さ。数分程度の筆記なら適度と思われる手ごたえも、使用時間が長引けば異なる感覚に変化するかもしれない。


キャップを付けて書かない理由を率直に書いてみた。あくまでもわたしの書き方を前提とした狭い視野での見解。現実には、キャップを付けたままで大型ペンを長時間使う猛者は少なからずいるのだろう。
また、今日の筆記具の中で実用性に劣る万年筆を敢えて使いながら、実用性を振りかざす姿勢は中途半端かもしれない。

ほどよいペン先の柔らかさとは

  1. 2009/08/02(日) 21:03:15|
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画像は、はなはだ写真映りがよくないが、ペリカンのM800。PFニブを搭載している。自分で確認したわけではないが、聞き知ったところによると、ペリカンのペン先の中で、PFニブは柔らかいニブということになっているらしい。

M800の1


しかし、書いてみると、筆圧の低いわたしにはその柔らかさは伝わってこない。個体差かもしれないし、意外とM800のPFニブは柔らかくないのかもしれないのだが、「PFニブ=柔らかニブ」という前提で書き進めることにする。

筆圧が高い人にはペン先の柔らかい万年筆は不向きで、その分選択肢が狭まるから、筆圧は低い方が良いと言われる。しかし、筆圧が低いと、ペン先の弾力を味わいながら書く楽しみが少なくなる。今のところ、M800のPFニブの神通力は、わたしには届かない。

以前アップしたモンブラン252くらいになると、わたしにも明らかに柔らかい。あのペン先特有の柔らかさは、他とは一緒にできないけれど。

わたしは柔らかいペン先が好きで、たぶんそれを万年筆らしさと思い込んでいるからだろうけれど、実際に使うとなると、柔らかいほど良いということはなくて、ほどよい柔らかさというものはある。
上のモンブラン252は、面白い書き味という点では気に入って使っているけれど、夢中になって(万年筆の存在を意識しないくらい中身に集中して)文字を書くとなると、ペン先は柔らかすぎる(わたしにとって)。欧文は分からないが、画数の多いチマチマとした漢字を書くとなると、ある程度ペン先に機敏な追従性を求めたくなる。線を引く都度しなりとなられては、テンポが悪くなる。

実用的な柔らかさというと、ペン先を紙面に当てたときの衝撃をしなやかに吸収しつつ、指の動きには適確に追従してくれる、というところか。そういう基準に照らすと、わたしにとって画像のPFニブは可もなく不可もなくだ。
ペンの重量や書き手の筆圧によって適正値は異なるはず。自分で見つけるしかない。


ところで、この記事を書くついでにネットをうろついた印象だけど、ペリカン万年筆の評価が不自然に高い(不自然というのも、高いというのも、まったく主観だけど)。
自分自身ペリカンは贔屓のブランドではあるけれど、One of Themだ。
輸入万年筆の中で、信頼性・安心感・ラインナップの分かりやすさはNo.1だと思う。そして、文具王国ドイツを代表するブランドとしての重み。それらが高い支持の理由なら納得できなくはない。
しかし、完全動作の個体で比較して、ペリカン製品が他ブランドを圧倒するとは考えにくい。万年筆は技術的に枯れたジャンルだし、筆記具の性格上、性能面で極端な個性を打ち出しにくいはず。