シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 ヴァント / ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2011/12/30(金) 11:34:09|
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1993年のライブ録音。



後期ロマン派の大交響曲にこそふさわしいような大きな構えで、大規模で悠然とした作品像を提示している。なにしろ演奏様式の洗練度はすこぶる高い。また、表現としても技術的にも磨かれている。

緻密にアンサンブルを鳴らし分けているので内声部の動きまで明瞭。とはいえ、バランスとしては外声部優位に聴こえる。主に弦群が音楽の流れを主導し、スケール豊かで量感のある音響をもたらしている。そこにミュンヘン・フィルの艶のある美音が相まって、たっぷりとして陰影豊かな音楽になっている。



反面、わき立つような躍動感はない。たっぷりの余裕が緩衝材のようになって、活気を吸収しているような。そのために、いくらか茫洋として聴こえる。

演奏様式を磨き上げようという意識が強いあまり、スリルとか生々しさは感じにくい。サウンドとしては表情豊かに聴こえるけれど、フレージングとかリズムとかが静的に整えられているので、音楽の息吹みたいなものはもうひとつ。

確かに洗練度と完成度は際立っているけれど、指揮者の統制が透けて聴こえるために、人工的な印象を受ける。

ベートーヴェン 交響曲第7番 カラヤン / ベルリン・フィル (1962)

  1. 2011/12/28(水) 06:00:00|
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1962年のセッション録音。古いステレオ録音ながら音質は良好。録音会場の音響を彷彿とさせつつ、細かい音が必要十分にとらえられている。



明快な語り口&きびきびとした運びと、厚みと量感のある音響を両立させた演奏。それに尽きるかもだが、並び立たせ難い要素をバランスさせる洗練したやり方と、その格好良さに耳を奪われてしまう。
この録音時点の感覚で、本場の伝統的な作品像をフレッシュに聴かせることに成功していると思うし、今聴いてもけっこう新鮮。

芯のない柔らかいフレージングだけど、切れのあるリズムのおかげでアンサンブルの線が泳ぐ感じはない。巧みにコントロールされて、分厚い響きの中に軽快な身のこなしを感じさせる。
響きは磨かれているけれど、甘さとか艶が目立つほどではなく、厚い響きが野暮ったくも息苦しくもならないように、ほどよく中和している。

ベルリン・フィルの機動力はすごくて、第四楽章あたりは圧倒的。ホールに広がる響きの量感も凄みを加速させている。機械的な感触はない。



カラヤンの関心は、もっぱら自己の演奏様式の洗練に向かっている。しかも、わかりやすいタイプの様式美を追求している。統制が強くなるぶん、表現の幅に一定の枠が加えられてしまう。聴覚の次元ではダイナミックなのだけど、聴き手の情緒を大きく揺り動かすようなアプローチではない、と思う。
ただし、情緒的に演奏することがこの交響曲に相応しいのだろうか?まあ、程度と好みの問題だろう。

ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』 クレンペラー / ベルリン放送交響楽団

  1. 2011/12/24(土) 13:00:00|
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1958年のライブ録音。モノラル録音。

auditeというレーベルが、ベルリンRIAS(RIASはアメリカ軍占領地区放送局の略称らしい)収録の音源をシリーズとして順次リリースしている。既出の演奏が多いようだけど、正規音源を使用していることが売りらしい。

過去に「20世紀の偉大な指揮者たち(GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY)」というシリーズ物がリリースされていた。そのVol.19がクレンペラーで、そこにベルリンRIASの録音が複数含まれている(あいにくと『英雄』交響曲は収録されていない)。伸びと広がりを感じさせる音質で、個人的には気に入っている。

今回採り上げるaudite盤の音質は、低音厚めのゴツくて重いサウンド。見通しが良いとは言いにくいし空間の情報は乏しい。スケール感みたいなものは分かりにくい。ただし、くっきり鮮明で生々しい。耳の当たりは優しくないけれど、音が張り出してくるようで、迫力がある。
これはこれで高音質と言えそうだけど、「GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY」の音質の方が好ましいかな。

* * *


これはクレンペラー渾身の『英雄』。おそらくは気心の知れたオーケストラであったろうベルリン放送交響楽団を前にして、クレンペラー濃度の高い演奏が繰り広げられている、と思う。
だから、クレンペラー贔屓としては持ち上げたいのだけど、いまいち人気の出そうにない演奏だ。

刺々しいまでのエネルギーに、造形はギンギンに引き締められている。血も涙もない感じに引き締められている。鉱物的な質感がある。感覚的愉悦につながる成分は皆無に近くて、聴き疲れする。

録音の質に加えて、オケの持ち味が影響しているのだろうか。演奏のアプローチとしては1955年のEMIへのセッション録音にかなり近い。あれもハードボイルドな演奏だと思うけど、フィルハーモニア管弦楽団の響きにはある程度明るさと柔らかさがあった。その点、ここで聴くベルリン放送交響楽団のサウンドはドライでハード。

ドラマ仕立ての高揚ではなく、音楽の一瞬一瞬に燃焼し続けようとでもいうような不撓不屈の姿勢があって、これはクレンペラーならではだ。でも行き過ぎかな。わたし自身、第三楽章あたりで聴き疲れた。

シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』 カラヤン / ベルリン・フィル (1978)

  1. 2011/12/23(金) 12:43:45|
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1978年のセッション録音。艶があって色彩感豊かなサウンド。切れのある音質ではないけれど、情報量は十分にあると思う。奥行きはあまり感じられない。



華麗で颯爽としている。悪く言えば芯のない、良く言えば柔軟でスムーズなフレージングに、華やかで優美なサウンド。それだけだと腰の軽い音楽になりそうだけど、テキパキとした進行と切れの良さが引き締めている。

素朴さのかけらもないタッチがこの交響曲に合っているとは感じないけれど、何よりも音楽の自然な流れや勢いが重んじられているので、違和感を覚えることはない、個人的に。

また、響きの量感を控えめにして、細部の効果的な工夫を聴かせる。この指揮者の上手さをあらためて感じさせられた。



特筆したいのが第三楽章中間部のトリオ。歯切れがよくて、それでいてニュアンスたっぷり。しばし聴き惚れてしまった。

一方、第二楽章はさくさくとした進行。とことん優美に、流麗に演奏されているけれど、あまり後をひかない。

第一、第四楽章は、華やかなサウンドより、歯切れよく小気味よさが気持ちいい。もったいぶらないで、ノリよく駆け抜ける。



カラヤン固有のテイストははっきりしているけれど、そのうえで作品の勢いとか流れを活かそうとする姿勢が感じられる。

ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』 クレンペラー / ケルン放送交響楽団

  1. 2011/12/10(土) 21:00:00|
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1954年のライブ録音。モノラル録音だけど、擬似ステレオっぽい。

背景に低レベルのノイズはあるけれど、音質は良好。低音は控えめと感じられるけれど、クレンペラー+ケルン放送交響楽団の音盤を複数リリースしているmedici MASTERSの音にも同じ傾向を感じた(当該音盤はANDANTE盤)。ケルン放送によるソースの特性かも知れない。EMIのセッション録音や他のライブ音源と比べて低音控えめというだけで、これだけを聴けばバランスは良いと思う。

* * *


堅固な造形と克明なディテールを聴かせながら、爽快なまでにノリノリで、駆け抜けるよう。速めのインテンポたけど(第一楽章から順に15:13 / 14:25 / 5:52 / 11:41)、フレージングの呼吸と抑揚が深いので、歌い切っているように聴こえる。というか、エグる、エグる。

英雄的なストーリーを熱っぽく語っているのではない。むしろ、即物的な手つきで楽曲の書法や構造を浮き彫りにしている。楽曲へのアプローチはクールだけど、演奏行為として情熱的。
当然、第二楽章あたりで葬送行進曲的な気分に耽ることはない。とはいえ、無機的な雰囲気はないどころか、力強く深いフレージングに訴える力を覚える。
楽曲を一旦突き放した上で、その素晴らしさを熱っぽく聴衆に訴えてくるような感じ。

ケルン放送交響楽団はちょっと線が細いように聴こえる。でも、別掲のベルリン放送交響楽団との演奏での息苦しさを考えると、ケルン放送交響楽団のキャラのおかげで聞きやすくなっているかもしれない。

先日取り上げた同じ組合わせによるブラームスの第1交響曲も同傾向の壮快な演奏だったから、この指揮者と(当時の)ケルン放送交響楽団は相性がよかったように感じる。

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