ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』 ヴァント / ケルン放送交響楽団

  1. 2012/02/26(日) 06:00:00|
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1976年のセッション録音。
今回取り上げるケルン放送交響楽団盤が70年代の録音で、知る限り他に4つの正規録音があるけれど、それらはすべて1990年以降に集中している(ちなみにヴァントは2002年に90歳で逝去)。
相対的には若かりし日の録音だけど、この当時のヴァントは60歳台の半ば。



音響効果で見栄を切ったり、余韻に浸ったり、タメを作ったりみたいな素振りは皆無。無駄口を叩かず、素っ気ないくらいに足早で、研ぎ澄まされている。
とっつきにくさはあるけれど、音楽の表情は細やかかつ変化に富んでいる。軽く柔らかく鋭敏に、オーケストラにひかせている印象。外貌はストイック風だけど、音楽は多彩に表情を巡らせていく。しなやかできめ細やかに。そして、ここぞというところでは、鋭く力を込めて切れ良く解き放つ。

造作が引き締まっているぶん、壮大というのではないけれど、サウンドは伸びやかにホール内に広がっていて、相応のスケールを感じる。とにもかくにもブルックナーに壮大さを求める聴き手には物足りないかもしれないけれど、密度感とスケール感とのバランスはとれていると思う。

ケルン放送交響楽団は実直に指揮者の要求に応えていると思う。ただし、色彩感が豊かであるとか、透明感があるとか、サウンドの洗練があればヴァントの細やかな音楽作りは一層映えたかもしれない。



「ここの盛り上がりはかっこいいよね」「このフレーズにはうっとりするよね」みたいに、人懐っこく聴き手に訴えかけてこない。ヴァントは高揚や陶酔などの"忘我"を解する指揮者と思うけれど、理性的に音楽を掌握し制御しようとする意志がむき出しなので、聴く側としても身構えてしまう。聴き手との間に固い空気を作ってしまうと、伝わるものも伝わりにくくなってしまう。
聴き手との相性にもよるのだろうけれど、そういう傾向のある指揮者だと思う。

ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』 ベーム / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2012/02/19(日) 20:50:56|
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1973年のセッション録音。
音の空間が広大で生々しい。音空間が張り出してくるような、高音質を狙って気張っている感じの録音。ただし細部のメリハリは甘く聴こえる。わたしが高音質録音のポテンシャルを引き出しきれていないのかもしれない。ただし、オーケストラの響き自体緩く聴こえるから、判断が難しい。



1950〜60年代のいくつかの演奏を聴く限りでは、ベームの生み出すサウンドは、高音域〜中音域のパートは端整で均質に、一方低音域のパートは厚く広がるように。シャープでしなやかな運動性と、柔らかい厚みを併せ持っていた。
70年代に録音されたこの演奏では、高音域〜中音域のパートは緩くなっていて、そのせいで演奏全体が緩く聴こえる。精度の点でもサウンドの点でも。
もともと音の色彩感より、切れの良さで表情のメリハリを作るタイプなので(と思うので)、切れが鈍くなると音楽に締まりがなくなってしまう。ウィーン・フィルの暖色系のしなやかなアンサンブルは香ばしいけれど、サウンドとして彫りは浅いし、陰影は乏しい。



もっとも、演奏に取り組む姿勢が緩いわけではなく、気迫は伝わってくるし、スケールは大きい。最強音には力がこもっているし、第三楽章は十分にスリリング。

この演奏に聴かれる緩みは、聴きようによってはプラスに転ずるかもしれない。よく言えば自然体というか、力が抜けていると感じられなくもない。かつての切れ味やメリハリが弱まることで、かえって素朴な風合いが生まれているとも言える。
とはいえ、個人的に、こういうのを"円熟"と持ち上げる気にはならない。

ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』 ヨッフム / ドレスデン・シュターツカペレ

  1. 2012/02/18(土) 18:40:00|
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1975年のセッション録音。
広々とした空間表現みたいなのは乏しいけれど十分に鮮明。しっとりとした美音系サウンドには、レーベルの好みが混ざっているかもしれない。



本場の名指揮者と名門オーケストラによる演奏だけど、どっしりと構えたような演奏ではなく、「いっちょ景気よくぶちかましてやるか!」みたいにやっている。

基調となるテンポは標準的〜やや速めくらいだけど、盛り上がるところでは加速し、金管群が派手に鳴り響く。聴き手と駆け引きをするようなアクセントの強調やタメが入る。きわめつけは第四楽章序盤でのシンバル。
もちろん賑やか一辺倒ではなく、第二楽章あたりはしっとりとしている。瞑想するような空気感とは違うけれど。

全曲を貫く一定した空気感みたいなものに浸りたい聴き手には、興ざめかもしれない。ヨッフムは絶えず音楽を動かしつづける。演奏として落ち着きなく、軽く聴こえるほどに。



勢いまかせっぽいノリだけど、そういうことではない。緩急や強弱のメリハリはそうとうに強いけれど、響きのテクスチュアは一貫して明解にして精緻。
そして、色彩豊かでありながらナチュラルな風合いに織り上げられたテクスチュアの見事さが、この演奏最大の聴きどころ、と感じる。

個々の線の流れを明解に響かせながら、それらを整えてバランスさせるというよりもっと踏み込んで、一つの太い線に撚り上げていくのだけど、そのやり方にヨッフムのインスピレーションが溢れている。それによって、落ち着いたトーンを基調としつつも、音楽はカラフルに生き生きと色合いを変化させて、心地よくて飽きさせない。
こういう手腕に限って言うと、シューリヒトの演奏を連想させられる。地味だけど名人芸的。

しかもヨッフムは、音楽を激しく揺さぶりながら、精緻かつ色合い豊かに織り上げていくのだから、演奏の難易度はそうとうのものだろう。この交響曲で頻出する金管群の激しい掛け合いまでも、切り裂くように勢いよく、力強くやりながら、響きの鮮度と美意識は揺るがない。要求する方も、それをやって見せる(聴かせる)方もすごい。ゾクゾクさせられる。



わたしにとっては、作品解釈を味わうより、名人芸的な、それも限界に挑戦するかのように鮮やかなアンサンブルを満喫するための録音。
とはいえ、ブルックナーにこだわる聴き手でなければ、裏切りを感じるほど尖っている演奏ではないと思う。

ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』 ヴァント / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2012/02/13(月) 06:00:00|
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1998年のライブ録音。

わたしがこの交響曲の構成要素と思うすべてに目配りされており、オーケストラを精密にコントロールしながら、スタイリッシュにまとめ上げている。その仕事の丁寧さとオーケストラを制禦する能力に感銘する。

欲しい要素はすべて取り込まれているけれど、どんな場面でも精緻で透明なアンサンブルとスムーズな進行に高い優先度が置かれているようだ。大半の場面では明解かつ淀みない進行が気持ちよいけれど、聴かせ所でも、テンポをちょっと落としたりとかの配慮はあるけれど、濃やかな表情を作り出すようなことはない。

ブルックナーの音楽は音響効果が特徴的なので、場面毎の気分とか雰囲気に浸りたい気持ちがある。ただし、気分とか雰囲気に傾斜して演奏してしまうと、ブルックナーの交響曲は連作交響詩みたいになりかねない。
ヴァントは、清潔かつ明解なアンサンブルで書法を浮き彫りにしつつ、音楽をつながり良くスムーズに流していくことで、場面毎の味わいと全曲のまとまりを両立させようとしている、ように聴こえる。

両立できているとは思うけれど、丁寧に雰囲気を醸し出しながらも、それに浸ることはしない。酔えるほどには溜めてくれない。
では、全曲のまとまりが良くなったことでよりインパクトが強くなっているかというと、そこは微妙な感じ。他の演奏でとかく冗長に聴こえがちなところ、第二楽章中盤とか第四楽章などはいい感じに締まっている。でも、全曲を見渡すと、構成美が映えるような作品ではないかもしれない。

目配りと配慮が行き届いた演奏だし、ヴァントの知見とか手腕に感心させられるけれど、この演奏が決定的なインパクトを持っているかというと、そこは微妙、個人的に。



ヴァントのやっている音楽自体洗練されているけれど、ベルリン・フィルの切れと透明感のあるアンサンブルがそれをずいぶんと強化しているようだ。そのことがヴァントらしさを高めているのか減衰させているのか。それを判断できるほどにはこの指揮者を聴いていないので・・・

ベートーヴェン 交響曲第6番『田園』 マゼール / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2012/02/09(木) 21:20:00|
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1959年のセッション録音。情報量はそれなりに多く、遠近感・広がりともに確保されている。ただし、会場の残響が深いために、ほどよく再生するのは難しい。ハマるとリアルな再生音を楽しめるけど、ハズすと塗り壁みたいに響いてしまいそう。



1930年生まれのこの指揮者の30歳前後の録音。
前年に録音された『運命』を聴きながら、『田園』の方にさらなる適性を予感し聴いてみたが、これは素晴らしい出来栄えではないだろうか。『運命』でも感じられた、楽曲の魅力やおもしろさを楽しむようなノリが作品のキャラに合っていると思う。

この若さにして指揮者の器用さや発想の豊かさは十分以上に伝わってくるけれど、それらは楽曲の魅力を引き出すことにまっすぐ向かっているように聴こえる。指揮者の若さがもっぱら良い方向に働いている感じで、気持ちよく仕上がっている。

個人的に第二楽章での遠近感の演出は忘れがたい。また、ベルリン・フィルから軽やかで柔らかみのある響きを引き出していて、なんとも心地よい。
第四楽章の嵐の迫力も必要にして十分。
全曲をとおして、自然賛歌っぽい素朴さとは異なるカラフルで洗練されたタッチだけど、ベルリン・フィルの渋めのサウンドがほどよく中和しているのか、良い具合のフレッシュさに色づいて聴こえる。

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