ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調 「田園」 シューリヒト / パリ音楽院O

  1. 2011/01/10(月) 02:02:43|
  2. ベートーヴェン 交響曲第6番|
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1957年スタジオ録音。

きびきびとした足取りの、率直で素朴な演奏。ケレンや大見得はなく、概ね語り口(活き活きと音符を鳴らすこと)と気迫で音楽を進めていく。職業的なエンターティナーなのに、こんなにも素朴でいいのだろうか、と余計な心配をしてしまうくらいだが、聴いていて退屈することはない。音楽はすみずみまで活気があって鮮やかに展開していく。この手腕は何なのだろうか。

こういうタイプの演奏は、当初は「これはこれでいいものだけど、もっと面白い演奏がありそう・・・」と思ってしまうけれど、複数の他の演奏をめぐった後で、結局戻ってしまう。

たいてい、演奏者の個性は、チャームポイントをもたらすことと引き換えに音楽を偏向させる。偏向すると、楽曲の持ち味のあるものがないがしろにされてしまう。それはうれしくない。かといって、無個性な演奏に退屈することも嫌。
そんなわたしにとって、シューリヒトのような指揮者、楽曲の持ち味と自身の個性を共存させられる演奏家の存在は福音。

* * *


第一楽章にのんびりとした気分は皆無で、きびきびと進行する。ただ、不思議と駆け足な感覚はない。それは密度濃いアンサンブルの賜物。弦群が突出せず、すべてのパートが活き活きと雄弁に歌っているから、音楽の表情は多彩で生命感にあふれている。
ただし、主題の歌わせ方に癖があって(極端なレガート)、アクセントとして意図的にやっているのだろうけれど、これは好きじゃない。

第二楽章も、演奏時間からすると速いテンポといえそうだが、歌い切っている。てきぱきとして率直な語り口なので、イメージが膨らむような心地はしないが、アンサンブルは多彩だし、音楽の変化に対して明敏に対処してくれるので、気持ちよく浸ることができる。

第三楽章はスピーディーで元気いっぱい。見通しがよく色とりどりなサウンドなので、圧迫感はない。

第四楽章は、物理的なパワー(重く激しい音響)で押して来る表現ではない。あくまでもアンサンブルの表現力で勝負。スリリングで気持ちよくノレる。「今回の嵐は、意外と足早に通り過ぎてくれたな・・・」という後味はあるけれど。

個人的には、第五楽章がこの交響曲の勝負どころ。大指揮者、名指揮者と呼ばれる人たちの演奏であれば、好みを別にすると第四楽章まではそれなりに納得できることが多い。しかし、第五楽章は簡単ではない。
この楽章では、メロディーの魅力に酔いたいし、活き活きとしたリズムや表情の変化を楽しみたい。でも、ベートーヴェンだからそれだけでは物足りなくて、心が解き放たれるようなカタルシスや、肯定的な活力だって不可欠と思う。
すべての欲求を満たしてくれる演奏には出会い難いと感じているが、シューリヒトの第五楽章はいい感じだ。感覚的な心地よさより活気とか力強さが優位だけど、目配りは行き届いている。
魅惑的な歌を期待してしまうと物足りないかもしれないけれど、第5交響曲や第7交響曲の終楽章とは一味違う、ベートーヴェンらしい力強く肯定的な終楽章という見方をすると、とても充実した演奏と思う。

* * *


演奏に粗さがあったりテンポ感が合わなかったりで、手放しで絶賛とはならないけれど、他の演奏と比較してみると、わたしにとってこれを超える演奏はそんなに多くはなさそう。

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ベートーベンの田園交響曲 シューリヒト・パリ音楽院管弦楽団

ベートーヴェン 交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」 カール・シューリヒト
  1. 2013/02/20(水) 23:01:19 |
  2. 今でもしぶとく聴いてます