メンデルスゾーン 交響曲第3番『スコットランド』 クレンペラー / フィルハーモニア管弦楽団

  1. 2012/10/24(水) 13:34:57|
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1960年のセッション録音。クレンペラーのセッション録音の中で、1960年前半頃の音質が、個人的には最も聴きやすい。鮮明さと空間の広がりが程よくバランスしていて、聴きやすい音と感じる。



メンデルスゾーンは存命中演奏家(指揮者)としても大きな足跡を残していて、当時忘れ去られた存在のバッハを復興させたことはしばしば言及される。
ただし、そんなに数をこなしていないけれど、メンデルスゾーンの有名曲を鑑賞していて、バッハの匂いを顕著に感じることはあまりない。

ところが、クレンペラーのこの演奏の第四楽章を聴いていると、メンデルスゾーンが対位法のすごい使い手であることがビンビンと伝わってくる。色鮮やかに躍動する立体感、とでもいうような感覚に浸ることができる。
この大ぶりで画然とした演奏が作曲者の構想に近いかは微妙だけど、メンデルスゾーン観をいい意味で大幅修正するような、画期的な表現と思う。



でも、それ以上にグッと来たのが第三楽章。この楽章のポテンシャルを出し尽くしたような演奏。

クレンペラーは、レガート奏法なんかを使ったりしないというか、音の刻み方は機械的といってもいいくらいに素っ気ないけれど、音の線的なつながりにこだわっている。歌というより抑揚を持った線として描き上げるところはこの指揮者らしいけれど、メロディ・ラインをとことん浮き彫りにする。
複数のパートが一つのフレーズを作り上げるときの呼吸のつながりは見事で、こうすることの難易度はわからないけれど、これほどの伸びやかさは滅多に耳にできないように思う。

揺らしたり、タメを作ったり、コブシを回したり、みたいな作為的な手法を用いない。リズム感とかアーティキュレーションとかの基本事項の制御でもって、音楽を息づかせている。知的なコントロールによって情緒的な奥行きを表出できることに、クレンペラーの上手さを感じる。
情緒は演奏者が盛り込むものなのか、それとも本来楽曲の中に宿っているものなのか。



クレンペラーは対位法的な楽曲やメロディアスな音楽に無類の上手さと適性を発揮する指揮者と思う。その本領を堪能できる演奏と思う。


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メンデルスゾーン 交響曲第3番『スコットランド』 ミトロプーロス / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2012/10/10(水) 06:00:00|
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1960年のライブ録音。モノラル。鮮明で安定しているけれど、やや乾いた感じの音質。演奏のテイストには合っているかもしれない。

没年の演奏だけど、この指揮者の生演奏らしい、暴れん坊な演奏。
あえて言えば「灼熱に沸騰するスコットランド」という風情だけど、こんなのは言葉遊びにすぎなくて、標題性は完膚なく払拭されている。

第1、2、4楽章は常軌を逸した速いテンポであるのに対して、第3楽章はゆとりをもって歌い上げられる。テンポは勢いに任せるように自由に動かされるけれど、楽曲の構成とか流れを踏まえた変化だし、経過部分の呼吸が絶妙なので、推移は自然と感じられる。

引き締まった響きに、むき出しのようなディテールの表出と、エグるような落差のあるフレージング。
ノリとしてはタガが外れているけれど、サウンドバランスはコントロールされていて、各パートは均等に近いバランスで明解に鳴らされている。突風のようなテンポにあっても、木管の動きを明瞭に聴き取ることができる。おかげで、音楽の表情変化はきっちりキャッチアップされている。これは確信犯的な狂気なのだろう。それでも、危険な綱渡りには違いない。
もちろん、ベルリン・フィルの腕力があってのことだろう。

情緒も甘味も絞って出し切ったような乾いたサウンドのままで、第3楽章を深い息遣いで歌い上げる。オーケストラが一体となって、絶妙の呼吸とか間合いを聴かせる。
これは"ギャップ萌え"というやつだろうか!?偏った芸風のようでありながら、実は懐が深い。

この音盤には、ドビュッシーとシェーンベルクの作品が併録されている。
作風が乖離する3つの音楽を彼は同じように扱っていて、ある意味蛮行のようでもあり、でもそれぞれが鑑賞に足る音楽として成立しているというか、面白くて耳が離せなくなる。

メンデルスゾーン 交響曲第3番『スコットランド』 ブロムシュテット / サンフランシスコ交響楽団

  1. 2012/10/04(木) 06:00:00|
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1991年のセッション録音。

郷愁とか感傷とかを誘うような情緒的な演奏効果より、楽曲の書法をきびきびと明解に描き上げることに専心しているような演奏。

畳み掛けるような勢いだけど、攻撃的ではないし、いたってスムーズ。アンサンブルにはメカニカルな感触もトゲトゲしさもなくて、室内楽的なまでに目が細かくて、爽やかな質のしっとり感を帯びている。

この交響曲では、第三楽章の扱いが鍵だと思う。演奏者の色が出やすいような気がする。
この演奏では、中間部の力強さに不足を感じないものの、煽りはなくて草食系な表現。聴き手の情緒とか想像力を刺激するような演出は無く、簡潔に様式的な均衡美を聴かせる。
というか、ニュアンスは丁寧に描き分けられているから、ブロムシュテットなりに表情をつけているのかもだけど、小気味が良くて軽いリズムとか、細身で粘らないフレージングなんかが生み出す低カロリーな清涼感が支配的。

楽曲をブロムシュテット流の洗練された演奏様式に奇麗に当てはめてみました、というような感触。で、その演奏様式と楽曲との相性はなかなか良さそうだし、演奏の完成度は高い。
ただし、洗練の度合いが高すぎて「水清ければ魚住まず」になっているきらいはあるかも。

セッション録音だから、録り直しや編集が施されているのは間違いないとしても、オーケストラは質の高い合奏を聴かせる。サンフランシスコ交響楽団の力量が高いのか、ブロムシュテットの統率力の賜なのか。

メンデルスゾーン 交響曲第3番『スコットランド』 カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. 2012/09/30(日) 14:33:43|
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1971年のセッション録音。

管弦楽の線的な運動性や綾を聴かせるよりも、塊としての音響を自在にコントロールしていく。
メンデルゾーンの響かせ方としては肥大気味かもだが、艶やかかつ涼やかなサウンドのおかげで、息苦しさを感じない。

『スコットランド』交響曲の書法は、メンデルスゾーンの音楽らしく端整で肌理が整っているけれど、この楽曲を特徴づけるのは抒情的で親しみやすいメロディの多用だと思う。
カラヤンの、音楽の横の流れに重きを置いて、メロディを美しく際立たせつつ連綿とつなげていくやり方は、楽曲の持ち味に呼応していると思う。

ただし、メロディアスな抒情性を思いっきり強調し、そこに美音をまぶして甘ったるい味付けを施しているから、この交響曲を実態以上に「耳当たりの良い手軽なオーケストラ・ピース」っぽく感じさせるきらいはある。

ベルリン・フィルは抜群にうまいけれど、上手いとか下手とかの次元を超えて、独自の美的音響世界を確立している。「最高級のポップス・オーケストラ」という感がなきにしもあらず・・・だけど。